二十歳のころ

2冊で1,300ページ以上ある長編で,通勤時間などで3週間くらいかけて読んだ.

戦争当時に20歳を迎えた人から最近20歳になった人まで,全部で40人くらいの「20歳のころ」に関するインタビューが時系列で書かれている.
戦時→戦後→現代と,読み進めるうちにその時代背景が移り変わっていく.20歳といえば多くが大学生相当の頃で,当時日本の若者がどのような状況だったのかがリアルに伝わってきた.

戦時に20歳を迎えた人たちのインタビューは,本当にこんな時代が日本にもあったのかと思わせるものだった.被曝した人も多く,原爆の恐ろしさが生々しく書かれていた.
また,「昔はこう生きるって決まっていたから生きるのが楽だった,今の若者は選択肢が多すぎて大変だろう」という1人の言葉が印象的で,そのような考え方もあるのだなと感じた.当時はみんな生きるのに精一杯で,人生に悩む暇などなかったのだろう.幸いなことに現代は多くの可能性が開かれている反面,「何をして生きていけばいいか分からない」という若者を産み出し続けているのも確かである.

戦後1960年以降に20歳を迎えた人たちは,多くの人が学生闘争に携わっている.学生集会やデモなどが学生全体で行われ,今では想像もつかないような大学生活が繰り広げられていた.東大紛争など詳しいことはあまり知らなかったので,実体験した人の立場から実情を知ることができた.

最後に最近(1980〜2000年頃に)20歳を迎えた人たちは,ある程度好きなことをして生きている印象を受けた.バーテンダーであったり,世界中を旅したりと,個人の選択肢が格段に増えてきた頃である.また1990年代はオウム真理教が物議を醸していた頃で,多くの人が言及していたし,元オウム真理教信者のインタビューなどもあり,どのように洗脳されていくのかなどが分かり恐ろしく感じた.

自分が20歳の頃は全くもって何も考えずに悠々自適な生活を送っていたように思うが,それもまた時代を反映したものなのかもしれない.20歳の頃にこの本を読んでいたら,また違った人生を歩んでいたのかなと思った.