誰のためのデザイン?

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

非常におもしろかった.20年以上前の本だが,デザインの本質は今でも全く変わっていないのだなあと感じた.よく設計されたデザインとそうでないデザインの区別は意識できるようになった気がする.この本を読んでる途中に今作っているアプリのUIを改めて見直してみると,よくない部分をいくつか見つけることができた.「対応付け」と「フィードバック」が特に重要だと思うので,それらを常に意識してデザイン設計を行えるようにしたい.

院試の時にヒューマンインタフェースに関する知識はいろいろ詰め込んだ記憶があるが,そのあたりの知識と,自分がWebサービス・アプリ開発のデザイン設計の際に行う思考とは結びついていなかったように思う.メンタルモデルやアフォーダンスなどの部分を読んで,腑に落ちる感覚があった.

今後分かりにくいデザインに出会ったら,その理由を考えてみるとおもしろいし学びにもなると思った.院の研究室時代の先生がBADUIについていろいろまとめていたのを思い出した.
楽しいBADUIの世界 | 1日1 Bad User Interface

最後の章(ユーザ中心のデザイン)で,興味深かった部分が何点かあった.

新しい技術の主たる役割は作業を単純にすることであるはずだ.技術を使った次の4つの方法がありうる.
・作業は以前と同じままで,メンタルエイド(思考・記憶上の手助け)を利用できるようにする
・技術を使ってこれまで目に見えなかったものを目に見えるようにし,その結果としてフィードバックや対象をコントロールする能力を向上させる
・作業は以前と同じままで自動化を進める
・作業の性質自体を変更する

結局世界を変えるのは技術なのだと思うと,エンジニアという職種は本当に可能性が広がっているように思う.

ハイパーテキストが本当に実用になった時のことを考えてみよう.それも今話題になっているような素晴らしいもので,画面にちょっと触れるだけで,言葉,音楽,ビデオ,コンピュータグラフィックス,シミュレーションその他が現れてくるものだとしよう.1人でそんなものを作れるとは,ちょっと思えない.何人かがチームを作って作らなくてはならないだろう.この技術が新次元を開拓してそれが理解されるようになるまでには,たくさんの実験が必要だし,数々の実験もあるだろうと予言しておこう.

この本が出版されてから20年以上たった現在,コンピュータが新時代を当然のように開拓し,書かれている通りなっている.