斬新なアイデアを生み出すための,デザインパターンとアンチパターン

これまでのサービス開発の経験から,アイデア考案にも設計と同じくデザインパターンがあるように思うので,アンチパターンとともに事例を含めてまとめてみた.

デザインパターン

① 「A で B する」を逆にする

世にあるサービスの「A で B する」の A と B を入れ替えてみる,すなわち目的を手段化してみると,面白いアイデアが生まれることがある.
Twinkrun, Peta Peta - 「スマホでゲームする」→「ゲームでスマホを使う」
スマホを身に付けておこなう鬼ごっこ.世に溢れているスマホゲームとは逆で,従来のアウトドアゲームにスマホを持ち込んでいる.「スマホは画面を見るもの」というステレオタイプにとらわれない発想がよい.
INTEMPO - 「歩くテンポで音楽が流れる」→「流れる音楽のテンポで歩く」
歩くテンポや走るテンポに合わせて音楽が流れるアプリは世に多くあるが,それを逆転させることで,音楽のテンポに人間の方が合わせるという従来にない体験を追求した作品.

② n-click を 1-click, 1-click を 0-click にする

普段の生活で,めんどくさいなと思うことに遭遇する度に,それを 1-click にできないか,さらには 0-click にできないかを考えてみる.「n-click を 1-click にするとビジネスになる.1-click を 0-click にすると革命になる」という言葉もあり,freeesmartHR などの業績を伸ばしているベンチャーは,まさにこの言葉を体現している.技術によってものごとをシンプルにできることはまだまだ数多く存在すると思う.
1Click飲み - 居酒屋予約を 1-click
近くのおいしいお店電話して,断られたらまた次の店に電話して…っていう面倒な作業を,全て 1-click でやってくれる.
LastTrain - 終電検索を 0-click
現在地から自宅までの終電の時間を,0-click で知ることができる.現在地の最寄り駅は GPS で自動で取得できるし,自宅の最寄り駅も毎回入力する必要ないし,終電に特化したアプリなのでもはや「終電」ボタンをタップする必要もない,という発想の方向性.
Zero Click - ピザの注文を 0-click
ドミノピザの,アプリを起動するだけでピザを注文することができる.アグレッシブなアイデアだが,時代の流れを考えると真っ当な方向性だと思う.というか Amazon なんか注文ボタンが押される前に商品を家の近くまで届けようとしてたりするので,そんなチャレンジングでもない気すらしてくる.

③ 最新技術や興味深い技術をサービスに落としこむ

最新技術やまだ世で普及していない技術を使って何かできないか考えると,斬新なアイデアが生まれることが多い.新しい技術というものは,従来できなかった何かを可能にしているはずなので,その特徴をうまく活かしてサービスに組み込めないか考えてみる.
Zeetle - データの送受信に「音」を利用
データの送受信に BluetoothQR コードではなく,音を利用することで,従来よりも簡単に,かつ精度を落とさずに送受信ができる.
matanai2 - 混雑度推定に CO2 濃度を利用
混雑度推定には Beacon がやカメラが用いられるケースが多いが,CO2 濃度を用いるという,世に前例がないようなアプローチにチャレンジしたプロダクト.

アンチパターン

① 課題ベースで考える

よくやる方法であり,かつ大衆的に歓迎されているが,個人的にはアンチパターンだと思っている.自分たちがうんうん考えて思いつくような課題って,すでに誰かも思いついていて何かしらのアプローチを取っているものがほとんどで,自分が世界で 1 番目に発見したってことはまずない.また,「●● を解決するために ◯◯ といったサービスを作る」といったボトムアップなアプローチでは,どうしてもありきたりなアイデアに帰着しがちである.自分がよくやる方法はこの逆で,あてもなく iPhone を振り回したりとかして,「今のモーションって ●● に応用できるのではないか」といったアプローチ.

ドメインを絞り込む

「●● を利用したアプリコンテスト」のようなものは毎週のようにおこなわれており,探せばいっぱい出てくる.しかし,そのようなものから出てきたアイデアはたいてい視野が狭くなりがちだし,さらにそれがハードウェア (例えば Ring や J!NS MEME などのデバイス) だと,それが普及しないことにはいくら面白いアイデアを考えても誰にも作ってもらえないといったことになってしまうので,あまりおすすめできない.ドメインがかなり限定されたコンテストは,メリットがあるのは主に主催者であると思った方がよい.
Web API に関しては上記のような問題は起こりにくいが,発想の方向としては,API を用いて何かできないかを考えるよりも,いったん何もなしにアイデアを考えて,それにうまく API を組み込めないかを考えた方が,何にも縛られない柔軟なアイデアが出やすいように思う.

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さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法

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